水槽を触ったら手を洗おう!(魚から感染する疾患)

魚類、両生類、爬虫類から感染する病気はあまり重篤になるものは少ないですがやはり注意

は必要です。一般的な衛生概念に注意していれば、抵抗力が弱っている方でなければ、そうそ

う感染することも少ないとは思いますので無闇に恐怖感をもたれる必要はないです。

ただアクアリストとしてあまり知る機会のない魚類などから感染する人畜共通伝染病について

知っておくことも大切だと思いますので、各種人畜共通伝染病についてと、それらに対する注意

や予防方法を少し記載したいと思います。

 

<アクアリウムにより人に感染する恐れのある病気>

 

マイコバクテリウム症(抗酸菌症、水族館肉芽腫)

 熱帯魚や海水魚に感染する非定型抗酸菌 Mycobacterium marinusは魚を飼っている水槽

にも付着しています。魚類では病気の進行は遅く、腹囲膨満、腹水貯留、肛門発赤や肝や腎

臓、脾臓などの内臓器表面に白色結節ができます。

人が感染すると? :発疹を伴った膿疱を形成して潰瘍や肉芽腫ができます。(水族館肉芽腫)

ただ、これらは数ヶ月で自然に治ってしまい重症化することは少ないと思われます。

 

Mycobacterium fortuitumは初めカエルから分離され、魚は内臓に結節をつくる。病状が進むと

骨格が侵され体のゆがみが見られます。

人が感染すると? :人は主に外傷後の皮膚、軟部組織の感染がほぼ60%を占め他には骨関節、

リンパ節など様々な部位に感染を起こす。肺の感染は比較的少ないが、肺に基礎疾患を持った

方だと2次感染としての感染例があり、結核と同様な症状が見られる。

非結核抗酸菌のため通常の抗結核剤が効かないので注意が必要です。

 

*詳しく知りたい方は下記のサイトも参照して下さい。

http://hen-p.hp.infoseek.co.jp/diseases.html

http://www.aquatouch.com/Granuloma.htm

 

ノカルジア症

Nocardia asterioidesは土壌細菌として広く自然界に分布し感染した魚は体表部に膿瘍を形成し、内臓では脾臓や

鰓に白色結節を形成する。

人が感染すると? :人には外傷から、または肺から侵入し菌腫を形成し皮膚、皮下に膿瘍を作り、肺では肺炎、

肺膿瘍、空洞を生じ血液中に侵入すると腎臓や脳などに膿瘍を形成する。致死率が高い疾患です。ただ基本的に

基礎疾患などにより免疫機能の極度に低下した方でないと発症することは少ないと思われます。

 

*詳しく知りたい方は下記のサイトも参照して下さい。

http://www.infoaomori.ne.jp/~tkosugi/microbio/nocardia.htm

http://www.jscm.org/kansendb/workshop/06.html

 

 

サルモネラ症

子供が飼っている小さなミドリガメは、夏にはほぼ100%サルモネラ菌を持っています。爬虫類

は一般的に不顕性感染ですが、脱水等のストレスで発症した動物は元気、食欲の低下、下痢

腸炎、肺炎、肝炎等の症状を示します。

人が感染すると? :人がそれらの動物の排泄物や体液を触った手をよく洗わないで食べ物を食

べたりすると、激しい腹痛、下痢や嘔吐などの食中毒の症状がでることもあります。

 

*詳しく知りたい方は下記のサイトも参照して下さい。

http://idsc.nih.go.jp/disease/salmonella/

 

運動性エロモナス感染症

コイなどの赤斑病:皮膚や鰭に皮下出血斑、局所的あるいは全身性の立鱗、眼球突出、腹水貯留

などを起こし、内臓では腸の赤変、腸炎をおこす。

金魚の立鱗病:立鱗、皮膚のびらんと皮下出血、腹水貯留、腸炎などをおこす。

淡水域に広く生息し水生動物の腸内などの細菌の構成員だが魚などに病原性もあり広く陸上生物

にも病原性がある。

人が感染すると? :食中毒をおこすことがある。

 

*詳しく知りたい方は下記のサイトも参照して下さい。

http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k01_g1/k01_3.html

 

ビブリオ病

Vibrio属 による疾患で眼球、鰭、体表などに出血や潰瘍を形成。また肛門のおよびその周辺の発赤、

拡張などが見られ、内臓にも点状出血や腸炎をおこす。海水魚でも発生のある病気

上の写真は、Dropsyと呼ばれる恐るべき急性の感染症を発症した瀕死のヒレナガヤッコです。原因はVibrio sp.

かPseudmonas sp.、あるいは複合感染と思われます。Dropsyは急性の病気であり、有効な対策法はありません。

水温の急変や、水質の劣化、ストレスなどさまざまな要因で急に発症します。

これが出たら、眼球突出、水腫、潰瘍などが生じ、2〜3日で死にます。二次感染のおそれがあるので、病魚は

隔離処分し、水槽に対しては大量換水や殺菌システムの強化といった処置をとらねばなりません。

                                               (写真・文章提供 delphinus 様)

V vulnificus(ビブリオ・バルニフィカス)

人が感染すると? :汚染した海産物の生食や汚染した海水を飲み込んだりすると嘔吐、腹痛

下痢などを起こす。免疫の低下した方、肝臓に疾患のある方は要注意で敗血症を起こし死亡す

る事がある。

傷口などを、汚染した海水につけると感染することもあり、皮膚を破壊し潰瘍を形成する。壊死性

筋膜炎など人体を破壊する様子から人食いバクテリアの1つに数えられる。

免疫の低下した方では敗血症を起こす事もある。海岸などで貝などによる傷での感染例もある。

 

*詳しく知りたい方は下記のサイトも参照して下さい。

http://www.eiken.city.yokohama.jp/infection_inf/vv1.htm

 

V cholerae(ビブリオ・コレレ)

人が感染すると? :ビブリオ・コレレの中には有名なコレラ菌があるが、コレラ菌毒素を出さないもの

をNAGビブリオという。汚染した魚介類や汚染水を経口接種すると下痢、腹痛、嘔吐などの食中毒

の症状を起こす。コレラほど重度な症状は起こさない。

 

*詳しく知りたい方は下記のサイトも参照して下さい。

http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k01_g1/k01_12/k01_12.html

 

 

簡単ですが発生例のある疾患について記述してみました。

 

対策および予防

ないがしろにされがちですが、1番重要なのは魚の世話をしたら良く手を洗うということです。

物理的に汚れや見えない細菌を落とす効果はハッキリしています。

一般的な衛生概念に注意すれば多くは人間の持つ抵抗力、免疫力の働きで感染する機会は極めて

少ないと思います。

ただ病気等で免疫力の低下している方、手や腕に傷があるときなどは要注意です。

対策としては

1、世話や掃除をした後は石鹸などでよく手を洗い充分な水道水を使ってすすぎをしっかり行う。

2、手や腕に傷があるときは、ラテックスの手袋などを着用し直接傷口が感染しないような工夫をすること

3、飼育器具の掃除などは台所などのシンクや食卓周りでは行なわない。

4、密閉型外部フィルターの始動時の呼び水や、水換え時のサイホンには充分注意しましょう。

  この際に水槽の水を不用意に口に入れない。口に入ったら絶対に飲まないこと

5、病魚を触るときには出来ればラッテックス手袋の着用が望ましい。

6、不幸にして食中毒らしき症状が見られたり、手指などになかなか治らない傷やしこりを発見した

  場合速やかに医師の診断を受ける事。

その際に重要なのはアクアリウムによって引き起こされた可能性があるということをハッキリ医師に

伝える事。

これにより医師は通常では鑑別に入れない病気に対し注意を払うことが可能になります。

 

 

ハコフグ飼育日記 上江別動物病院のHP